君と始める最後の恋
 仕事終わり真っ直ぐ沙羅さんの所にお邪魔すると、沙羅さんと抱っこをされた花果ちゃんが元気にお出迎えしてくれた。

 花果ちゃんは指しゃぶりをしている。もうすぐ1歳になるだけあってかなりしっかりしてきた。可愛くて仕方がない。


「こんばんは~!お招き下さりありがとうございます!」

「急にごめんね!来てくれてありがとう!」


 お家の中にお邪魔すると、手を洗って花果ちゃんに触れる。

 部屋の中は沢山のおもちゃやぬいぐるみで沢山溢れていて、段々と花果ちゃんの色も出てきている。

 その様子にほっこりしていると沙羅さんが苦笑いする。


「凄いでしょ。ダメって言ってるのに充くんが買ってくるし、お義母さん達も送ってくるの。」


 類くんのご実家は確かにみんな温かい。むしろ類くんが何であんなにツンツンするんだろうって思ったりするけど、考えれば末っ子で可愛がられ過ぎて拗れてしまったのではないかと思ってしまう。

 あんな素直じゃない男の子居たら可愛いに決まってるよね。

 充さんは充さんできっとかなり可愛がられて、その愛情をそのまま類くんに与えてきたという感じがして、凄く微笑ましいご一家だった。


「花果ちゃんが可愛くて仕方ないんですよね。わかるなあ。」

「郁ちゃんが持ってきてくれたわんこのぬいぐるみもすっごく気に入ってて毎日抱っこしながら寝てるよ~。」

「何ですか、その尊いお話は。花果ちゃんをお嫁さんにください。」

「郁ちゃんは貰われてる側だからね~。」


 そう言いながら少し笑って、花果ちゃんを優しく撫でる。

 まだ結婚したばっかりだし、当然そんな予定はないけど、花果ちゃんを見ているとどうしても考えてしまう。

 私と類くんの間に子供が出来たらどんな子に育つだろうって。

 類くんに似てほしいななんて気の早い事を考えていると「郁ちゃんさ」と沙羅さんに名前を呼ばれた。


「何かあったでしょ?」

「え?」

「お昼、声が暗かったし、郁ちゃんが急に電話してくる事無かったから。」


 そう言われて思わず肩が揺れる。
 なるべく気付かれない様にしていたはずなのに、沙羅さんにはバレていた。
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