君と始める最後の恋
素直になれない
────Side 郁


 あの日から数日、あまり生活は改善されないまま、類くんとはほんの少しだけ気まずい日々を送っていた。

 私があまり類くんと顔を合わせない様にしてしまっていた。

 早めに起きて用意を済ませていると、類くんが起き上がってくる。


「なに、もう準備したの。」

「おはようございます。また先に行きますね!朝ごはんは机の上なので。」


 そう言いながら鞄を持って出ようとすると類くんに腕を掴まれる。

急に腕を掴まれて驚いて類くんの方を見ると、類くんは真っ直ぐこちらを見てきている。


「何避けてんの。」

「避けてないですって。忙しいからそうなっちゃってるだけです。」


 そう言って笑って腕を掴む手を優しく払う。

 今は全然話す気分じゃない。

 それに話しても何も解決なんてしないと思うから、私の気持ちの問題だし。と、素直になれないまま、また私は自分の思っている事に蓋をした。

 類くんはそんな私の様子を見て軽く溜息を吐く。


「最近、郁が何考えてんのか分かんない。」


 そう言って洗面所の方に向かっていく。

 何考えてるかなんて知られたくないから隠してるんだよ。
 そんなの悟られたくもない。

 類くんに行ってきますと声も掛けないまま出社した。
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