君と始める最後の恋
─────Side 類


 今日は一段とテンションが高い郁の背中を見守りながら、郁が淹れてくれたコーヒーを飲む。

 またコーヒー甘くなってる。

 水無月さんと話し込んでいる内に砂糖を入れ過ぎたのか、胸焼けしそうなほどの甘さ。なんて思っていると、小川と水無月さんも焦れったい雰囲気を醸し出していてとても仕事する気にはなれない。


「…俺今日半休で帰っていい?」

「良いんじゃないですか、そんな忙しい時期でも無いし。」


 男性補佐とそんな話をしながら、郁の方をちらっと見る。

 郁も帰れるなら一緒に連れ帰ってたまには家でゆっくり…、なんて思い内線を掛ける。

 同じオフィス内だし話しかけたらいいのだろうけど、俺達は何故か知らないけど話すだけで注目をされる。


『はい、桜庭です。』

「俺だけど。」

『いっ、…お疲れ様です。』


 俺の名前を呼ぶと小鳥遊さんに何か言われるからか、伏せて通常通りの会話に戻る。


「半休で帰ろうと思うんだけど、君の今日の業務量は?」

『今日は比較的落ち着いてますけど…、体調悪いんですか?』

「結婚式前後馬車馬の様に働いたし、たまには良いでしょ。休みの共犯のお誘い。」

『何それ、かわ…。』


 可愛いと言おうとして誤魔化す様に咳ばらいをしている。

 20後半の男に向かってよく可愛いなんて言えるな。
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