君と始める最後の恋
「というか、完璧な君なんて求めてない。ポンコツでも不器用で頑張り屋な君を初めから好きで支えるつもりでここに居るから、ポンコツが見られないのも、頼ってくれないのも寂しい。」

「…一言余計ですけど、好きってなるの悔しい…。」

「君は単純だから。」


 そう言いながら笑う類くんにまたときめかされる。

 単純なのも全く否定できない。

 それでも私が勝手に思い込みと暴走を起こしていただけで類くんは初めからありのままの私を好きだと言ってくれていた。


「…ごめんなさい、いつも。」

「本当にね。」


 落ち込む私に類くんは呆れつつもそれ以上は咎めなかった。


「というか、君が俺の為にってするように、俺も君の為にって動くのは当たり前だから、そろそろいい加減理解して。」


 そう言いながら、車のシフトレバーをパーキングからドライブに切り替える。それからハンドルを握ると、ゆっくりとアクセルを踏み込んでいった。

 無事に仲直り出来て、これから沙羅さんの家に紬を迎えに行くのだと思う。

 話も終わったかと思いきや、何事も無い様に前を向いて類くんは静かに言葉を零す。


「それに、君とこうなった時点で」



─────誰よりも幸せにするって決めてるから。



 そんな一言で私の涙腺は意図も簡単に崩壊する。

 抱き着きたいのに、今類くんは運転中だ。
 どうしてこのタイミングでそんなことを言ってくるのか。

 私が自分の体を抱きしめていると類くんが不思議そうにこちらを見る。


「何してんの君。」

「類くんに抱き着きたい欲をこれで抑えてます。」

「…家に帰ったらいいけど。」


 久しぶりにこんな穏やかに会話が出来ているのを嬉しく思う。
< 414 / 426 >

この作品をシェア

pagetop