君と始める最後の恋
 家に帰ると紬も気持ち良さそうに眠っている。

 最近少しずつ寝る時間が伸びてきていて、起きている時間よく泣く事を除けば本当に苦労しない。

 この寝顔も類くんにそっくりで愛おしいと思えるのに、ゆっくりと紬を見つめる余裕も最近は無かったように感じる。


「明日、休みだし今日は俺が夜泣き対応するよ。」

「…え?」

「今日で我慢も限界って感じしたから少し休んで。」


 そう言って私の髪を軽く撫でる。

 いつもなら類くんも仕事から帰ってきて疲れているのにと考えてしまうけど、確かに私も体力的に限界だったのかもしれない。

 今日くらいは素直にお願いしても…?でも…、とまた私が少し悩んでいるのを見て類くんが私の頬を引っ張る。


「寝ろ。」

「わかりました!わかりましたから!」


 私の返事を聞くとほんの少しだけ笑って「おやすみ」と声を掛けてくれる。

 そんな類くんの肩を少し掴んで背伸びすると頬に軽く口付ける。

 普段こんな事は出来ないけど、今日は…、今日だけは。

 少し驚いた表情をしている類くんから離れて、自分の中では慣れないことをして照れくさくなる。


「…おやすみなさい。大好きです。」


 それだけ言うとベッドの中に入り込む。

 大好きとかは素直に言えるのに甘える事だけはまだまだ出来ない。

 それでも見放さずに居てくれる類くんにこのくらいの事は伝えていきたい。
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