君と始める最後の恋
 先輩が先に飲み物だけ持って席に戻ってきて目の前に座る。料理は出来るまで時間が掛かるので、呼び出し機を渡されていた。


「すみません、お金…!」


 慌てて鞄から財布を取り出そうとする私を先輩は制した。


「いいから、ここくらい出しとく。」

「もう何か、何もかもすみません。」


 そう言って謝ると一ノ瀬先輩はふっと笑いを零す。
今、笑う要素あったのだろうか。


「君らしいよね。」

「え?」

「頑張って調べてくるのに詰めが甘い。」


 仕事の事も含めてダメ出しされているはずなのに、その表情がすごく優しくて思わずときめいてしまう。


「今度、リベンジ行くでしょ。パスタ。君がすごい美味しそうに語ってたからもう気になっちゃってるし。」


 頬杖を付きながらリベンジの提案をしてくる先輩。まさかそんな提案を先輩からしてくれるって思っていなくて驚く。


「また…、行ってくれるんですか?」

「パスタのプレゼンは最高だったし、仕事もそのくらいしてほしいけどね。」

「痛いところばっかついて意地悪やめてください!」


 そう怒る私に少し笑った時、呼び出し機が鳴って先輩が取りに行ってくれる。

 さっきからスマートだし、私がときめかされているだけな気がする。きっと落ち込んでる私をフォローしてくれてたんだよね。どんどん好きになる、こんなの。
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