君と始める最後の恋
 補佐と言っても今私がやってるのは本当に必要最低なライン。それでこんなにしんどいなんて、一ノ瀬先輩の補佐を私なんかが務まるのだろうか。

 今は指導係として間違えてたら教えて貰えるけど、その内1人で今の作業を1人で?考えるだけで気分が下がってしまう。1回喝を入れられて、頑張ろうと思えたはずなのにあれから1週間。すでに挫折しそうで気持ち的にはジェットコースターのようだった。

 こんなに悩んでいるのに一ノ瀬先輩は良いとも悪いとも教えてくれないし、私の指導係は薄情だ。


「一ノ瀬先輩の鬼畜、ドS、意地悪、髪の毛サラサラヘアー。」

「何それ、悪口?」


 休憩室で休んでいた私の元にそっと置かれたレモンティーのペットボトル。顔を上げた先に居たのは一ノ瀬先輩で、いつもの目でこちらを見下ろしていた。


「お、お疲れ様です!?」


 驚いたのもあったけど、ちょうど悪口を零したタイミングで登場されて声が思わず裏返ってしまう。普段休憩室になんて来ないから油断してた。

 なんで今日に限って…。というか、このレモンティーは何。差し入れ?そんな優しい人でしたっけ先輩なんて心の中で失礼なことを思いながら、置かれたレモンティーを見ていた。


「いらない?間違えて押したからあげようと思ってたんだけど、いらないなら他の誰かにあげるよ」


 そう言って冷めた目をこちらに向けながら、取り上げようとする手から慌ててレモンティーを手に取る。


「いただきます!大好きです!」

「最初から素直にありがとうございますって言っときなよ。レモンティーなんて俺が飲むわけないし」

「…一ノ瀬先輩言葉足りないってよく言われません?」

「何、喧嘩売ってる? 」

「いえ、メッソウモナイ。」


 ありがたくレモンティーの蓋を開ける。甘くて爽やかな喉越しが好きで私はよくこれを飲んでいる。一ノ瀬先輩は私の目の前に座って、相変わらず少し甘めのコーヒーを手にして飲んでいた。

 見かけによらず甘党なの若干可愛いんだよな。
 思わずギャップ萌えしてしまいそう。なんて、絶対表には出せない事を考えた。
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