君と始める最後の恋
休憩空け、いつも通り書類をファイリングしながら軽く目を通す。渡されている書類は目を通していい物と認識して、今の会社がどんな企業とどんな繋がりを持ってるのか、どんな事をしているのかを把握しつつ1つずつまとめていた。
そういう仕事のやり方を教えてくれた一ノ瀬先輩は、今出先でしばらく帰ってこない。一緒に連れてって貰えるとか入社してすぐは思ったけど、私は営業事務扱いだったのでそんな機会も当然なかった。
最初こそは営業という仕事に凄く憧れていたし、まさか事務配属にされると思っていなかったから知った時には多少がっかりしてしまったけれど、今は、この仕事も大事な仕事だって理解しているし、私が事務をこなして一ノ瀬先輩が営業に出られると思えば役に立てている気がして嬉しかった。
𓂃𓈒𓂂𓏸
陽が少しずつ落ちてきて暮れる定時の少し前、一ノ瀬先輩は会社に戻ってくる。
「おかえりなさい。」
「うん、どこまで進んだ?」
私の業務の報告を簡潔に済ませると、その間一ノ瀬先輩は口を挟まずずっと聞いていてくれる。いつもならここで「そう、帰っていいよ」で流されるので今日もそのパターンかと思っていた。
「…渡したファイルの中に、イベント関連のものがあったと思うんだけど。」
「へ?」
唐突に始まったファイルの話に間抜けな声が出る。きちんと目を通してたから何を聞かれても問題は無いはずだったのに、いざ話を振られるとドキッとしてしまう。
何とか質問された事に答えつついつもより長めに会話をすると、一ノ瀬先輩は無表情だったものをふと和らげて「及第点、お疲れ」と言いながら雰囲気を少し柔らかくする。きちんと覚えているかのテストを知らない内にされていたらしい。
「あ、ありがとうございます?」
「次、俺が担当してる取引際の一覧。今君にファイルでメールに送ったから確認して。これ一通りチェックして。毎日数箇所ずつテストするから。ちゃんと覚えられているか。」
「えっ、テスト!?」
「そりゃそうでしょ、覚えてもらわなきゃ困る。いつまでもポンコツへこたれ補佐を付けるつもりないから。出来なかったら使わない。」
そういう言い方をされてしまっては、そのテストに何が何でも合格するしかない。
「分かりました!桜庭 郁!この課題クリアしてしごでき補佐に昇進してみせます!」
鼻息荒く一ノ瀬先輩にそう宣言すると、一ノ瀬先輩は私との顔の間にファイルで壁を作ってしまう。
「鼻息荒いし近いから離れて。」
乙女に向かって鼻息荒いとは何事か。
そういう仕事のやり方を教えてくれた一ノ瀬先輩は、今出先でしばらく帰ってこない。一緒に連れてって貰えるとか入社してすぐは思ったけど、私は営業事務扱いだったのでそんな機会も当然なかった。
最初こそは営業という仕事に凄く憧れていたし、まさか事務配属にされると思っていなかったから知った時には多少がっかりしてしまったけれど、今は、この仕事も大事な仕事だって理解しているし、私が事務をこなして一ノ瀬先輩が営業に出られると思えば役に立てている気がして嬉しかった。
𓂃𓈒𓂂𓏸
陽が少しずつ落ちてきて暮れる定時の少し前、一ノ瀬先輩は会社に戻ってくる。
「おかえりなさい。」
「うん、どこまで進んだ?」
私の業務の報告を簡潔に済ませると、その間一ノ瀬先輩は口を挟まずずっと聞いていてくれる。いつもならここで「そう、帰っていいよ」で流されるので今日もそのパターンかと思っていた。
「…渡したファイルの中に、イベント関連のものがあったと思うんだけど。」
「へ?」
唐突に始まったファイルの話に間抜けな声が出る。きちんと目を通してたから何を聞かれても問題は無いはずだったのに、いざ話を振られるとドキッとしてしまう。
何とか質問された事に答えつついつもより長めに会話をすると、一ノ瀬先輩は無表情だったものをふと和らげて「及第点、お疲れ」と言いながら雰囲気を少し柔らかくする。きちんと覚えているかのテストを知らない内にされていたらしい。
「あ、ありがとうございます?」
「次、俺が担当してる取引際の一覧。今君にファイルでメールに送ったから確認して。これ一通りチェックして。毎日数箇所ずつテストするから。ちゃんと覚えられているか。」
「えっ、テスト!?」
「そりゃそうでしょ、覚えてもらわなきゃ困る。いつまでもポンコツへこたれ補佐を付けるつもりないから。出来なかったら使わない。」
そういう言い方をされてしまっては、そのテストに何が何でも合格するしかない。
「分かりました!桜庭 郁!この課題クリアしてしごでき補佐に昇進してみせます!」
鼻息荒く一ノ瀬先輩にそう宣言すると、一ノ瀬先輩は私との顔の間にファイルで壁を作ってしまう。
「鼻息荒いし近いから離れて。」
乙女に向かって鼻息荒いとは何事か。