俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
エピローグ SIDE 翔
今日のラストは、新千歳空港から羽田までのフライトだ。
帰ったら、久しぶりに真由香とゆっくり過ごせる。そう思うと、普段は感情をあまり表に出さないのに表情が緩んだ。
「珍しいな、君がそんな顔をするなんて」
フライトに向けて空港内を移動中に、同じ便に乗る機長がからかい交じりに言う。彼とのフライトは三回目になるが、気さくな人で普段から顔を合わせれば声をかけてくれる。機長としても人としても信頼できる人物だ。
「このフライトを終えたら、妻に会えると思ったらつい」
隠すことなく本音を漏らした俺に、彼は声をあげて笑った。
「そうだったな。椎名君は新婚だった。奥さんは管制官なんだろ?」
「ええ、そうです」
「結婚したばかりで、今が一番楽しいときだろうな」
既婚者の彼は、自身の新婚当時を思い出しているのだろうか。穏やかな表情でそう言ったのだが、それからふっと眉を下げた。
「今夜こそ俺は、起きている娘に会えるだろうか」
「娘さん、まだ二歳でしたか?」
「そうなんだよ。パパって呼んでくれるようにはなったが、なんせ顔を合わせる時間が少なくて。機嫌が悪いと抱っこをしても大泣きされる」
仕方がないとはいえ、父親としては寂しいだろう。
というか、数年後の俺もこんな状況になっているのかもしれない。そこにわずかな切なさを感じるが、それ以上に真由香との子ができたらますます幸せなのだろうと想像した。
新千歳空港を発ち、自動操縦に切り替えた。
「おかしいな。EGTが異常に上昇している」
到着の時刻が迫ってきた頃、機長がエンジン排気温度の異常な上昇に気づいた。同時に、コックピット内に火災センサーが鳴り響く。
「まずいな。エンジン火災が起きている」
すぐさま計器を確認して、燃料の供給を止めた。
これで収まってくれればと願ったが、その気配はない。CAからも炎が見えていると報告が入り、エンジンに消火剤を噴射した。
帰ったら、久しぶりに真由香とゆっくり過ごせる。そう思うと、普段は感情をあまり表に出さないのに表情が緩んだ。
「珍しいな、君がそんな顔をするなんて」
フライトに向けて空港内を移動中に、同じ便に乗る機長がからかい交じりに言う。彼とのフライトは三回目になるが、気さくな人で普段から顔を合わせれば声をかけてくれる。機長としても人としても信頼できる人物だ。
「このフライトを終えたら、妻に会えると思ったらつい」
隠すことなく本音を漏らした俺に、彼は声をあげて笑った。
「そうだったな。椎名君は新婚だった。奥さんは管制官なんだろ?」
「ええ、そうです」
「結婚したばかりで、今が一番楽しいときだろうな」
既婚者の彼は、自身の新婚当時を思い出しているのだろうか。穏やかな表情でそう言ったのだが、それからふっと眉を下げた。
「今夜こそ俺は、起きている娘に会えるだろうか」
「娘さん、まだ二歳でしたか?」
「そうなんだよ。パパって呼んでくれるようにはなったが、なんせ顔を合わせる時間が少なくて。機嫌が悪いと抱っこをしても大泣きされる」
仕方がないとはいえ、父親としては寂しいだろう。
というか、数年後の俺もこんな状況になっているのかもしれない。そこにわずかな切なさを感じるが、それ以上に真由香との子ができたらますます幸せなのだろうと想像した。
新千歳空港を発ち、自動操縦に切り替えた。
「おかしいな。EGTが異常に上昇している」
到着の時刻が迫ってきた頃、機長がエンジン排気温度の異常な上昇に気づいた。同時に、コックピット内に火災センサーが鳴り響く。
「まずいな。エンジン火災が起きている」
すぐさま計器を確認して、燃料の供給を止めた。
これで収まってくれればと願ったが、その気配はない。CAからも炎が見えていると報告が入り、エンジンに消火剤を噴射した。