俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
 そうこうしているうちに、耳が小さく笑う声を拾う。まさか起きているのかと顔を上げたところ、意地悪に笑う翔さんと目が合った。

「ちょ、ちょっと」
「待ちくたびれた」

 抗議の声をあげかけた私に、彼が不満そう言う。

「そうじゃなくて」

 翔さんが、かまわず私を胸もとに抱きしめ直す。

「真由香」

 しっとりとした声音で呼ばれて、ドキリとする。抵抗する手も抗議の声も、うっかり止めてしまった。

「愛してる」

 ビクリと体が揺れる。

 これは彼に協力する見返りで、気持ちが伴っているわけじゃない。そうわかっているのに、瞬時に全身が熱くなる。

 どうあがいても彼の腕から逃れられそうにない。それどころか動けば動くほどよろしくない体勢になりそうだと、渋々おとなしくした。

「おやすみ、真由香」

 これほど親密な触れ合いに戸惑ってはいるが、少しも嫌悪していない。そんな自分がよくわからない。

「おやすみ、なさい」

 こんな状態で眠れるわけがないから、翔さんが寝たのを確認したら離れよう。そう思っていたのに、規則正しい彼の息遣いと温もりに、知らず意識を手放していた。


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