俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
 それからも、翔さんとの甘い日々は続いた。

 予想通り、私と翔さんがマンションで一緒に過ごす時間は少ない。
 ただ、その短時間が濃厚すぎるから困っている。

 理想通りのテノールがささやく愛の言葉は、いつだって私をドキドキさせる。肌を掠める彼の吐息に背中がゾクゾクするし、抱きしめられると全身が熱くなる。

 さすがに仕事中は職務に集中しているけれど、そうでないときは彼のことばかり考えてしまう。

 もとから人として好感を抱いていた相手だ。それが恋心に傾くのは早かった。
 そもそも欠点ですらプラスに見えた時点で、男性として好意的に見ていたのだと思う。

 最初はその仕事に対する真摯な姿に好印象を抱き、そこに声が好みだという大きな要素が加わった。
 演技とわかってはいても、理想の相手に甘くささやかれて迫られたら、堕ちるなって言う方が無理。

「はあ……好きになっても虚しいだけなのに」

 翔さんが私に向けるすべてが演技にすぎない。一方通行な想いは苦しいだけだ。
 むくわれないとわかっているのに、彼への想いはどんどん加速していった。



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