俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
 真由香の反応に注意しながら話していれば、強引にされると流されがちな面があるとわかった。さらに、男の弱った姿に絆されるようだとも。

 結婚を急かしてくるという両親を一旦は静かにさせられるというメリットよりも、俺がつきまといに弱りきっているということの方が真由香にとっては重大だったらしい。その優しさに、ますます好意が募っていく。

 愛をささやかれたいなど、同僚を気遣って多少大げさに言ったとわかっていたが、俺の声を気に入っているのは本当のようだ。掴んだ彼女の傾向と声という武器を最大限に生かして、徐々に彼女を堕としていく。

 そうと決まれば、動きだしは早い方がいい。真由香が呆気に取られているうちに同居を了承させ、自宅に彼女を迎え入れた。

 仕事をがんばりたいという真由香の気持ちを、最大限に尊重するのは当然だ。その合間でいたずらな接触を仕掛けると、彼女は顔を真っ赤にさせて抗議してきた。
 怒る様までかわいくて、ついいじめたくなる。そんな連鎖に、どんどん真由香に溺れていく。

 さすがに同じベッドで眠るのは拒否されるかと思いきや、最終的には受け入れてくれた。
 流されすぎやしないかと心配にもなるが、彼女の意識が俺だけに向いているのなら問題はない。

 悩みを相談していた桜庭さんは、俺のやり方に若干呆れつつも『それほど大事なら、絶対に逃すな』と強く言われている。
 彼が結婚前に、すれ違いから自分のもとを去った今の妻を必死で追いかけたのは知られた話だ。俺に向けた言葉はその教訓からだろうと、肝の銘じておいた。

 真由香の胸もとで揺れるそろいのリングを、左手の薬指にはめさせるのに時間をかけるつもりはない。
 次はどうやって真由香を責めようか。そんな想像に、気づけばつきまとわれていた鬱憤はすっかり晴れていた。



< 53 / 110 >

この作品をシェア

pagetop