俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
「真由香。これ、ありがとう」
仕事が休みの今日。昼すぎに出勤する翔さんのために昼食を作っていると、リビングの入口から声をかけられた。
振り向いた私に、彼が袖を通したワイシャツをツンと引っ張ってみせたのを見て「ああ」とうなずいた。
「私のもあったから、ついでに」
自分のものだけアイロンをかけるのも、なんだか嫌味な気がする。彼はいつもクリーニングに出していたようだが、どうせだからと自然に私が引き受けるようになった。
翔さんと暮らすようになって二週間近く経ち、彼の分までなにかをするのは当たり前のような感覚になってきた。アイロンがけだって今回が初めてじゃないのに、翔さんはタイミングが合えばこうして毎回お礼を言ってくれる。律儀な面もまた、彼を素敵に見せた。
翔さんはちょうど通りかかっただけのようで、お礼を言うとそのまま自室に入っていった。
どうなることかと思っていたふたりでの生活も、意外と平穏に……とは言わないが、それなりに楽しくやっている。
一緒のベッドに眠るのはさすがに今でも緊張するが、と考えていたところで、ふと昨夜の記憶がよみがえった。
『真由香、好きだよ』
耳もとに感じる彼の吐息に、背中がゾクゾクした。おまけに当初の約束では甘い言葉をささやくだけのはずだったのに、ベッドの中で背後から抱きしめられるという密着した状態だ。もちろん最初は抵抗したが、彼によれば気分を盛り立てるための演出らしい。
パジャマ越しに伝わる彼の体温に、妙な気分になりかける。その逞しさに、翔さんが異性であることをまざまざと意識させられた。
拒むべきだろう。でも私の中に生まれた彼への好意が邪魔をして、強く出られない。
「わ、忘れよう」
過剰な見返りにどうにかなってしまいそうだと、火照った顔を手であおいだ。
しばらくして、翔さんと向かい合わせに座って食事を始めた。
仕事が休みの今日。昼すぎに出勤する翔さんのために昼食を作っていると、リビングの入口から声をかけられた。
振り向いた私に、彼が袖を通したワイシャツをツンと引っ張ってみせたのを見て「ああ」とうなずいた。
「私のもあったから、ついでに」
自分のものだけアイロンをかけるのも、なんだか嫌味な気がする。彼はいつもクリーニングに出していたようだが、どうせだからと自然に私が引き受けるようになった。
翔さんと暮らすようになって二週間近く経ち、彼の分までなにかをするのは当たり前のような感覚になってきた。アイロンがけだって今回が初めてじゃないのに、翔さんはタイミングが合えばこうして毎回お礼を言ってくれる。律儀な面もまた、彼を素敵に見せた。
翔さんはちょうど通りかかっただけのようで、お礼を言うとそのまま自室に入っていった。
どうなることかと思っていたふたりでの生活も、意外と平穏に……とは言わないが、それなりに楽しくやっている。
一緒のベッドに眠るのはさすがに今でも緊張するが、と考えていたところで、ふと昨夜の記憶がよみがえった。
『真由香、好きだよ』
耳もとに感じる彼の吐息に、背中がゾクゾクした。おまけに当初の約束では甘い言葉をささやくだけのはずだったのに、ベッドの中で背後から抱きしめられるという密着した状態だ。もちろん最初は抵抗したが、彼によれば気分を盛り立てるための演出らしい。
パジャマ越しに伝わる彼の体温に、妙な気分になりかける。その逞しさに、翔さんが異性であることをまざまざと意識させられた。
拒むべきだろう。でも私の中に生まれた彼への好意が邪魔をして、強く出られない。
「わ、忘れよう」
過剰な見返りにどうにかなってしまいそうだと、火照った顔を手であおいだ。
しばらくして、翔さんと向かい合わせに座って食事を始めた。