俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
「よし」

 気合を入れながら、メッセージを開く。

【早く、真由香に会いたい】

 こちらを気遣う言葉に続いたのは、すっかり言われ慣れた甘い言葉だ。
 なにかに挑むようにして開封しただけに、肩透かしを食らった気になる。でも同時に、まだ別れは切りだされなかったと安堵もした。

「どうしていつも通りなのよ」

 翔さんの変わりない態度をなじる。

 こっちはこんなに悩んで鬱屈として……と考えかけて、それは彼には関係のない話だと我に返った。

 翔さんは、最初の約束を貫いているだけ。多少、愛情表現が過剰な気はするものの、それが彼のやり方だ。想いを寄せてしまった私が悪い。

 久しぶりに誰かを好きになったけれど、恋がこんなにも苦しいものだなんてすっかり忘れていた。

「情けないなあ、私」

 すでに結婚して、子どもがいる友人もいる。
 それなのに私は恋愛経験すら乏しくて、時折、周囲から取り残されたような気持ちになる。

 そんなことはないと、わかっている。今は仕事に生きると決めたのは私自身だ。だから自分を卑下する必要はない。

 なにをしても、心の中から彼の存在が消えてくれない。私はどうしようもなく翔さんに惹かれているのだと、自身の感情を持て余した。



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