俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
「愛されているのか、いないのか。翔さんの気持ちは、あなたが決めることではないはずです」
私たちの間に、愛なんて存在しない。それを悟られないように、冷静な口調で言いきった。
「違うわ。私はたしかに翔に愛されていたし、今でも想われている。フライトで海外に出ている間も……ほら。私に連絡をくれるのよ」
そう言って差し出した彼女のスマホには、たしかに翔さんの名前が数件並んでいた。
どんな用件か、内容まではわからない。ただ私だって毎日連絡があるわけではないのにと、ズキリと胸が痛んだ。
でも怯みはしないと、もう一度胸もとのリングに触れる。
「翔さんが本当にあなたを愛しているのなら、私は身を引きます。ですが、私だって彼を愛しているんです。本人の口から聞かない限り、あきらめるなんてできません」
「……なによ」
これまでとは違う低音でそうつぶやいた彼女は、唇をぐっと噛みしめる。
「あなたみたいな平凡な女が、翔に釣り合うとでも思ってるの?」
それから私を睨みつけ、嘲るように言う彼女にあぜんとした。これまでのしおらしい姿が嘘のように思えてくる。
「取り立てて美人でもなければ、管制官だなんて仕事も地味で」
「地味だろうがなんだろうが、なくてはならない仕事です」
航空業界に身を置く人の発言とは思えない言い様に怒りを覚える。パイロットだけではなく、管制官や整備士、その他多くの職種の人の働きがあって、初めて飛行機を安全に飛ばすことができる。CAであるこの人は、それを日々感じているはずだ。
「ちょっと彼に目をかけられたからって、いい気になんないでちょうだい」
「それが、あなたの本性ですか?」
彼女に同情した自分が馬鹿みたい。あまりにも人を見る目がなさすぎた。
「だったらなんだって言うの? あなたには関係のないことだわ」
「その通りですね」
「わかったんなら、さっさと翔から手を引きなさいよ」
横暴な物言いに腹が立つが、冷静になるように自身に言い聞かせる。
「なおさら、あなたに翔さんを渡すわけにはいきません。翔さんは人一倍努力を重ねて今の立場を築いてきたんです。そんな彼を、自分を着飾るアクセサリーのように扱うなんて絶対に許せません」
「な、なによ」
「見た目や立場なんてどうでもいい。私は、彼の誠実でひたむきなところを愛しているんです」
本人には言いたくても言えない想いを吐露して、心はすっきりしている。
私たちの間に、愛なんて存在しない。それを悟られないように、冷静な口調で言いきった。
「違うわ。私はたしかに翔に愛されていたし、今でも想われている。フライトで海外に出ている間も……ほら。私に連絡をくれるのよ」
そう言って差し出した彼女のスマホには、たしかに翔さんの名前が数件並んでいた。
どんな用件か、内容まではわからない。ただ私だって毎日連絡があるわけではないのにと、ズキリと胸が痛んだ。
でも怯みはしないと、もう一度胸もとのリングに触れる。
「翔さんが本当にあなたを愛しているのなら、私は身を引きます。ですが、私だって彼を愛しているんです。本人の口から聞かない限り、あきらめるなんてできません」
「……なによ」
これまでとは違う低音でそうつぶやいた彼女は、唇をぐっと噛みしめる。
「あなたみたいな平凡な女が、翔に釣り合うとでも思ってるの?」
それから私を睨みつけ、嘲るように言う彼女にあぜんとした。これまでのしおらしい姿が嘘のように思えてくる。
「取り立てて美人でもなければ、管制官だなんて仕事も地味で」
「地味だろうがなんだろうが、なくてはならない仕事です」
航空業界に身を置く人の発言とは思えない言い様に怒りを覚える。パイロットだけではなく、管制官や整備士、その他多くの職種の人の働きがあって、初めて飛行機を安全に飛ばすことができる。CAであるこの人は、それを日々感じているはずだ。
「ちょっと彼に目をかけられたからって、いい気になんないでちょうだい」
「それが、あなたの本性ですか?」
彼女に同情した自分が馬鹿みたい。あまりにも人を見る目がなさすぎた。
「だったらなんだって言うの? あなたには関係のないことだわ」
「その通りですね」
「わかったんなら、さっさと翔から手を引きなさいよ」
横暴な物言いに腹が立つが、冷静になるように自身に言い聞かせる。
「なおさら、あなたに翔さんを渡すわけにはいきません。翔さんは人一倍努力を重ねて今の立場を築いてきたんです。そんな彼を、自分を着飾るアクセサリーのように扱うなんて絶対に許せません」
「な、なによ」
「見た目や立場なんてどうでもいい。私は、彼の誠実でひたむきなところを愛しているんです」
本人には言いたくても言えない想いを吐露して、心はすっきりしている。