俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
「真由香は仕事熱心で、向上心も高い。相手が誰であっても気遣いができるし、家庭的な一面もある。むしろ、俺の方が彼女にふさわしいのか不安になるくらいだ」

「か、過大評価しすぎです!」

 聞いていられず、小さく抗議する。

 翔さんはそれを、健やかな笑みでかわした。

 そうしている間に彼女は我に返ったようで、恨みのこもる視線で私を睨みつけてくる。

「そんなの、どうでもいいわ。こんなちんちくりんな女を連れているなんて、恥でしかないじゃない」

 たしかに背は低いし美人でもなんでもないけれど、さすがにひどい言われようだ。
 密かに凹む私を慰めるように、翔さんが頭をポンポンとなでる。 
 まるで親密さを見せつけるような触れ合いになってしまい、彼女の顔がゆがんだ。

「俺にとって真由香は、誰よりもかわいい」

 腰を抱き寄せられ、不謹慎にも胸がドキドキする。

「人を見かけでしか判断できないとは、かわいそうだな」

 あからさまな同情を滲ませた翔さんに、牧村さんの表情はますます険しくなった。

 前に彼が話していたしつこくつきまとっていた女性はこの人なのだろうと、さすがに察している。

 知り合うきっかけになったあのカフェで見せた彼の弱々しい一面は、大げさでもなんでもなかったのかもしれない。今の翔さんを見れば、牧村さんの振る舞いにさんざん悩まされていたのがわかる。

「俺をつけ回すだけでなく、最愛の妻にまで手をだしたなど許せるはずがない」

「な、なによ」

 翔さんの言いように、さすがに牧村さんも媚びるような態度はもう見せない。
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