俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
 観念してそろりと視線を上げる。
 すべてを見透かすような彼の真っすぐな視線には、嘘もごまかしも通用しないと本能で理解する。

「私も翔さんが、好きだから」

 恥ずかしくて、視界がジワリと滲む。
 ようやく想いを告げられて満足する私を、彼は強く抱きしめた。

「ようやく手に入れた。絶対に手放さないから」

 絞り出すような彼の声に胸が熱くなる。私からも、翔さんの背に腕を回した。

 彼の温もりに包まれながら、もうここを出ていかなくてもいいのだとか、指輪を隠す必要もないと安堵する。自然と腕に力がこもり、胸もとに頬ずりするように顔を埋める。それからもっと翔さんを感じたいと、深く息を吸い込んだ。

「積極的だな、真由香」
「え?」

 顔を上げようにも、さらに抱き込まれて敵わず。

「誘ってるのか?」

 耳に直接語り掛けられて、ぶるっと体を震わせながら彼の胸もとに縋りついた。

「もう我慢しなくてもいいんだよな?」
「え、えっと……?」
「とぼけても無駄だぞ。鼓動が跳ね上がったのは、真由香も期待しているからなんだろ?」

 お互いの体をさらに密着させたのは私の方だ。そのせいで、すべてが筒抜けになっている。
 慌てて体を離そうにも、許してもらえない。

「なあ、真由香」

 たっぷりと吐息を含ませて耳もとでしゃべるから、彼の息遣いが直に伝わる。背中がゾクゾクとして、離れないといけないのに逆に彼のジャケットを強く握りしめる。

「愛してるんだ。だから、真由香に触れさせてくれないか?」

 いつもは意地悪で強引なくせに、こんなふうに下手に出て懇願されたら断れない。
 恥ずかしさが大きいだけで、もとから本気で拒むつもりはなかった。私だって、もっと彼に近づいて気持ちを確かめ合いたい。
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