俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
 想いが通じ合ってからの、翔さんの行動は早かった。
 早々に私の両親に会い、結婚の許可をもぎ取った。とくに母親はずっとやきもきしていたのもあり、なんの反対もなく翔さんを受け入れた。

 翔さんのご両親もうちと同じようなもので、こちらも問題なく結婚を認めた。

「真由香、覚悟は決まったか」

 リビングで隣り合って座る私たちの目の前には、すでに記入済みの婚姻届が置かれている。

「え、えっと、もう少し恋人期間があっても……」

 一緒に暮らしていたとはいえ、そのほとんどの時間がすれ違い生活だった。いずれ結婚するのは決定事項だとしても、しばらくは恋人としてお互いをもっと知り合う時間があってもいいはず。そう遠慮がちに提案したのは、今から十日ほど前の話だ。

 それに対して翔さんは不満そうな様子を見せたものの、承諾してくれた……よね?と聞き返したくなるくらい、今の私はなぜかその件で追い詰められている。

 お互いの仕事の都合ですれ違ってしまい、十分に話ができていない。ようやく休日が重なったのが今日だ。

 とはいえ、思い返してみれば常にお互いの存在を感じる日々だった。

 目が覚めると、いつの間にか彼が隣で眠っていた。
 出勤時間がすれ違う日は彼の食事を用意しておいたし、逆に翔さんが作っておいてくれた日もある。

 同じ部屋に暮らして、お互いに気遣い合う。これってもう夫婦じゃない?と感じたが、そこはあえて言わないでおく。

 恋愛事に関してはすっかり枯れていた私でも、好きな人と想いを通じ合わせたからには気分が上がる。
 休みが合った今日こそ、デート日和だ!と密かに期待していたのに、挨拶に続いて彼にかけられた言葉がさっきのそれだ。

〝覚悟は決まったか〟だなんて、なんだか恋愛とは程遠い言葉の気がする。
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