クールな総長は私だけにとびきり甘い
ことはが笑うと、蓮もつられるように、かすかに唇をゆるめた。

「じゃあ――また、な」

 その一言を残して、蓮はくるりと背を向けた。

「えっ、どこ行くの?」

「家。お前が猫、連れてくんだろ?」

「あ、うん。でも……」

 思わず引き留めようとして、ことはは口を閉ざした。

 なんて言えばいいのかわからなかった。

 蓮は振り返らずに、ゆっくりと夕暮れの路地に消えていった。

 腕の中のミルクが、小さく鳴いた。
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