クールな総長は私だけにとびきり甘い
蓮は少しだけ目を細めてから、低い声で言った。

「……悪い」

 それだけ。でも、それだけで、ことはの胸がふっと温かくなった。

 授業の終わり際、先生が黒板に短い問題を出す。

「じゃあこの漢字、書ける人ー?」

 しんとした教室に、先生の声が響く。

「神崎、やってみて」

 蓮が、ほんのわずかに顔をしかめたのが見えた。

 けれど、すぐに無言で立ち上がり、黒板に歩いていく。
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