クールな総長は私だけにとびきり甘い
彼は言いながら、ダンボールの下に手を伸ばし、猫をそっと抱き上げた。タオルもないのに、革ジャンの袖で猫を包んで。

「ちゃんと乾かさねぇと、こいつ風邪引く」

 その仕草が、やけに優しく見えた。

(え……この人……暴走族……だよね?)

 その瞬間、ことはは気づいた。

 彼のバイクに貼られたロゴ。

 《黒焔》――この街で知らない人はいない、暴走族の名前。

「えっ……もしかして、神楽坂……蓮くん……?」

 名前を口にした途端、彼の目が少しだけ細くなった。

「俺のこと、知ってんの?」

「あ、あの、ちょっとだけ……。うちの学校の人、ですよね……?」
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