さくらびと。美桜 番外編(2)
第1章 再会。
四月の終わり、
まだ肌寒い京の空気に紛れて散りゆく桜の花弁が舞っていた。
医学生という立場上、実験と解剖学に追われる日々は息つく暇もない。
その日も遅くまで大学に残り、帰りがけに立ち寄ったのは三条にある大型ショッピングモールの地下にある本屋だった。
三ヶ月前に参加した合コンで名刺のように自己紹介した彼女の顔を忘れるわけがない。
しかし連絡先を交換したものの、その後特に連絡することもなく過ぎていた。
美桜は窓辺に置かれた椅子に腰掛け、窓の外を眺めている。
京都の夕暮れ時の淡い光が彼女の横顔を柔らかく照らしていた。
「……七瀬さん?」
自分の声が震えていることに気づいたのは、呼びかけた後だった。
彼女がゆっくりとこちらを振り向く。驚いた表情の奥に見えたのは、ほんの一瞬の懐かしさだった。