さくらびと。美桜 番外編(2)
桜のような、けれどもっと優しく温かい匂い。
それが彼女自身の香りなのだと気づくのに時間はかからなかった。
「じゃあ……僕はこれで」
そう言って立ち去ろうとしたとき、彼女の声が背中に届いた。
「待って。もし時間があればお茶でもしない?」
心臓が跳ね上がる音が聞こえた気がした。
振り返ると、美桜は少し頬を赤らめながら続けた。
「有澤君のこと、もっと知りたいし」
その言葉に導かれるように、僕は頷いていた。