さくらびと。美桜 番外編(2)
帰りの車の中、二人は無言のまま手を繋いでいた。
窓ガラスに映る夫婦の姿は他人のように見えた。
いつもの会話の火花が消え去り、冷たい空気だけが流れていた。
「ねぇ」
美桜が突然口を開いた。
「最後に何したい?」
あまりにも直接的な質問に裕紀は戸惑った。彼女はすでに現実を受け入れ始めているのか。
「そんなこと……」
彼の反応など気にも留めずに美桜は続ける。
「やりたいことリストを作ろうよ。まだ半年あるんだから」
その言葉に裕紀は胸を衝かれた。彼女の方がよっぽど前向きじゃないか。
「分かった……一緒に考えよう」
家に着くなり二人はダイニングテーブルに向かい合って座った。
ノートとペンを取り出す美桜の横顔は悲壮感よりも決意に満ちていた。
「まずは旅行かな」
「どこ行きたい?」
「海が見たい。昔一緒に行った湘南の海。あの時みたいに手を繋いで砂浜を歩きたい」
ページの上に『湘南海岸ウォーキング』と書く彼女の手元を見つめながら、裕紀は過去の記憶を辿った。
確かにあの日の美桜は太陽のように輝いていた。
窓ガラスに映る夫婦の姿は他人のように見えた。
いつもの会話の火花が消え去り、冷たい空気だけが流れていた。
「ねぇ」
美桜が突然口を開いた。
「最後に何したい?」
あまりにも直接的な質問に裕紀は戸惑った。彼女はすでに現実を受け入れ始めているのか。
「そんなこと……」
彼の反応など気にも留めずに美桜は続ける。
「やりたいことリストを作ろうよ。まだ半年あるんだから」
その言葉に裕紀は胸を衝かれた。彼女の方がよっぽど前向きじゃないか。
「分かった……一緒に考えよう」
家に着くなり二人はダイニングテーブルに向かい合って座った。
ノートとペンを取り出す美桜の横顔は悲壮感よりも決意に満ちていた。
「まずは旅行かな」
「どこ行きたい?」
「海が見たい。昔一緒に行った湘南の海。あの時みたいに手を繋いで砂浜を歩きたい」
ページの上に『湘南海岸ウォーキング』と書く彼女の手元を見つめながら、裕紀は過去の記憶を辿った。
確かにあの日の美桜は太陽のように輝いていた。