さくらびと。美桜 番外編(2)
病室のドアを開けると、薄暗い部屋で美桜が機械に繋がれながら眠っていた。







裕紀は枕元の小さなテーブルに花瓶を置き、窓際に立って外の景色を眺める。








桜の香りに紛れて、美桜の寝息がかすかに聞こえた。






それは儚い花びらのように今にも消えてしまいそうな音だった。







(美桜……どんなに辛くても……僕が側にいるよ)








裕紀は窓辺に座り込み、愛する妻の寝顔を見つめ続けた。







花瓶の水滴が一つ、また一つと落ちていく。







時間という名の水が刻一刻と流れていることを示すように。





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