さくらびと。美桜 番外編(2)
第6章 さくらびと。
半年が経った。
季節がめぐり、四月の風が窓辺のカーテンを揺らしていた。
病室の窓から見える並木通りの桜が満開を迎え、薄紅色の波が病棟の灰色を洗い流している。
「きれい……」
美桜の囁きは春風よりも儚げだった。
以前の張りがあった肌は今や陶器のように生気がなく、骨格が浮き彫りになった腕が毛布の端から覗いている。
裕紀は無意識に彼女の手を握った。
冷たい。かつての温もりはどこへ行ってしまったのか。
季節がめぐり、四月の風が窓辺のカーテンを揺らしていた。
病室の窓から見える並木通りの桜が満開を迎え、薄紅色の波が病棟の灰色を洗い流している。
「きれい……」
美桜の囁きは春風よりも儚げだった。
以前の張りがあった肌は今や陶器のように生気がなく、骨格が浮き彫りになった腕が毛布の端から覗いている。
裕紀は無意識に彼女の手を握った。
冷たい。かつての温もりはどこへ行ってしまったのか。