さくらびと。美桜 番外編(2)
「桜見てると……思い出しちゃうんだよね」


美桜はゆっくりと首を回し、桜に焦点を合わせる。






その動きさえも辛そうだった。







「あなたと出逢ったときも、桜が咲いてた。あなたが凄くクールで大人びてるからちょっと気になってた……」






懐かしそうに微笑む彼女の右目の端から透明な滴が落ちる。







裕紀は指でそっと拭った。







「覚えてるよ。そのあと本屋で再会して。」






「ふふ……それから、裕紀を結構振り回したっけ」






乾いた咳が言葉を遮った。






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