さくらびと。美桜 番外編(2)
窓の外で舞う桜の花びらは、美桜の顔に映る陰影を淡く照らしていた。



彼女の青白い肌に浮かぶ頬の赤みは、窓辺の微熱か、それとも命の残り火なのか。





「私ね」





美桜の声は風に溶けるように小さく、それでも確かな芯を持っていた。








「あなたが大学に行ってる間に……いろんな病気について調べてたの」







裕紀は黙って耳を傾けた。





彼女の知的好奇心は昔から強かった。





病に冒された今もなお知識を求めている姿に胸が痛む。






「最初はね……外科医の裕紀がカッコイイんだろうなぁとか、色々ふと思ってた」






「手術着姿で颯爽と歩いて……患者さんの命を救う姿なんてドラマみたいでしょ?」







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