さくらびと。美桜 番外編(2)
弱々しくも懐かしそうに笑う彼女の横顔を見つめながら、裕紀は大学の講義室を思い出していた。
初めて人体解剖に触れた日の緊張と高揚。
「でもね」
美桜の指が裕紀の手の甲をそっと撫でた。
「裕紀ってさ、……人の気持ちに寄り添うのが本当に上手だと思うの」
窓から差し込む陽光が彼女の頬を黄金色に染める。
「今こうして私の傍にいてくれるのもそう……
私が落ち込んでる時は必ず気づいて励ましてくれるし……
色々な事に気付いて教えてくれる……
そして、私をいつも笑顔にしてくれる」
裕紀は何も言えなかった。
それは恋人として当たり前のことだと思っていた。
しかし美桜の目には別の意味があった。