さくらびと。美桜 番外編(2)
「だから……思いきってさ、精神科医なんてどうかな?」





唐突な提案に裕紀の呼吸が止まった。




今まで一度も考えたことのなかった専門領域。





「目に見えない、心の病と向き合う先生って……色んな世界が広がっていて、かっこいいと思うなぁ」






美桜の瞳が真っ直ぐに彼を捉える。







「外科医は医材で傷を縫うけど……精神科医は心を心で縫うのよ」





その比喩があまりにも美しくて、裕紀は言葉を失った。




確かに医学部に入る前から人の痛みに敏感だった自分がいる。




しかし今まで、親の期待や社会的地位に惹かれて外科を目指していたのは事実だった。






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