さくらびと。美桜 番外編(2)
「……驚いた?」




「……うん、意外だった」



素直に認める裕紀に美桜は柔らかく微笑んだ。





「でも……」




「しっくりきたでしょ?」







「はは、さぁ…どうかな。」






読まれた心に裕紀は苦笑いを浮かべ、窓から見える桜をぼんやりと眺めた。






「実はね……ここ二週間ずっと考えてたの」





「私の看病してくれてる時のあなたって……本当に先生みたいだったから」





窓の外で風が強くなり、桜吹雪が舞い上がった。





薄紅色の雲が空を埋め尽くす。






「誰かの心を支える仕事って……」






「裕紀に、ぴったりだなんじゃないかな。」







その言葉と共に美桜の目から涙が零れた。しかし笑顔は崩れない。






「美桜……」





「お願い」




裕紀の手を握る力が少しだけ強くなる。






「私の最後のわがまま……聞いてくれる?」







桜の香りが病室に満ちていく中、裕紀は決意を固めた。









< 76 / 97 >

この作品をシェア

pagetop