さくらびと。美桜 番外編(2)

「美桜……本当に大丈夫なのか?」






病院の車椅子を押しながら裕紀は心配そうに尋ねた。






美桜の体力は限界に近かったが、彼女の瞳には強い意志が宿っている。






「うん、今日だけは……我儘を聞いてほしいの」






そう言った彼女の声は弱々しくも凛としていた。










看護師たちの制止を振り切り、裕紀は愛する妻を病院近くの公園へ連れてきた。





そこには、満開の桜並木が彼らを出迎えていた。











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