さくらびと。美桜 番外編(2)
美桜が最後に意識があったのは一週間前。




桜の木を見に行ってすぐのことだった。





「裕紀っ……本当に、ありがとう」






酸素マスク越しの声はほとんど聞こえないほど小さかったが、それでも彼女は最後の力を振り絞っていた。






「私の、ために……ずっと…、一緒にいてくれて」






「当たり前だ…」






「美桜っ…行くな…行かないでくれっ…。」







裕紀は泣きながら美桜の頬を右手で優しく撫でる。







「裕…紀……ごめんね…。」






そして美桜の手を、裕紀はぎゅっとにぎりしめる。







「美桜……愛してる。」







「…私…も…」





裕紀はとめどなく涙を流していた。






「裕紀の…未来を…、、…いつか…必ず、幸せに…なって……」







その言葉を聞いた時、裕紀の中で何かが弾けた。






彼女の最後の願いこそが自分の生きる道だと悟った瞬間だった。






「美桜っっっ!!!」








美桜は静かに、穏やかな表情で息を引き取ったーーー。






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