クズ男の本気愛
「ごめん、散らかってて」
「いや十分綺麗です!」
「適当に座ってね」
霧島くんはきょろきょろした後、ソファの端にちょんと座った。なんだかその光景がおかしくて、私はテーブルの上を片付けながら笑う。
「なんか小さくなってない?」
「いや、だって先輩の家って……」
「寛いでていいよ。ご飯何食べたいかな? えーと今あるのは鶏肉と豚肉かな……カレーとか唐揚げとかでいいなら」
「うわ! 最高のメニュー! えーとじゃあ、えーどうしよっかな、あーうん、カレーで!」
「はーい」
すぐにキッチンに立って準備を始めると、霧島くんが背後でうろうろしてこちらを覗き込んでくることにすぐ気が付いた。苦笑いして振り返る。
「テレビとかつけてていいよ」
「いやそんな……なんか手伝ってもいいですか? 俺そんな器用じゃないけど、玉ねぎの皮剝くくらいなら……あ、米洗います? さすがにそれは出来ます」
「え、いいの? ありがとう」
先日のように、彼は簡単なことだけど私を手伝ってくれた。自己申告したようにあまり料理は出来ないようだが、小さなことでもやってくれれば助かるし、何より一緒に料理をしてくれるその気持ちが嬉しかった。
二人で並んで簡単なカレーを作り、出来上がったそれを運んで食べる。特にこだわりなんてない、ルーを溶かして作るタイプのカレーなので比較的早く完成した。
「美味しいです!!」
「あはは、よかった。ルー溶かすだけのやつでごめん」
「いや俺作ったことあるけど断然こっちの方が美味いですよ。やっぱ違うなあ……あ、材料費ちゃんと教えてくださいね、金払うんで」
「いやこれぐらい」
「ちゃんとしましょ、こういうの」
スプーンを口に運びながら真剣な顔で言ってくれたので、素直にうなずいておいた。こういうところはきっちりしているの、霧島くんっぽかもしれない。
「で……増田さんと璃子先輩ってどういう知り合いだったんですか? あれ、普通の知り合いじゃないっしょ。何か嫌な感じしますもん」
直球でそんな質問が来たので、その鋭さに呆気にとられた。薫さんとは知り合いだった、とは伝えておいたが、そのほかは何も言っていないのに。
「実は……」
私は食べながら、薫さんが以前話した大輔の女友達であること、大輔はなぜか私と別れていないなんて思っていること、会議の時間についての出来事など全て話した。
すぐにお皿を空にした霧島くんは真面目な顔で話を聞いてくれ、私は何とか全部を説明し終える。
「という感じで……でもあの、会議の時間は私のうっかりかもしれないから……」
「ちょっと……なんでもっと早く言ってくれないんですか……」
霧島くんは深いため息をついて項垂れてしまった。私は慌てて言い訳を口にする。
「いや、会議のことは気のせいかなって思ってたの。でも資料がないことでさすがに誰かがわざとやったのかな、ってようやく思い出して……薫さんとはいろいろあったけど、仕事とプライベートは分けなきゃって思ってて」
「元カレのことは」
「……びしっと強く言ったから、さすがにもう諦めたかと思うし……」
「先輩。先輩はしっかり者だしほんといい人なのが魅力ですけど、もうちょっと人を疑った方がいいです。会議時間の時も、中津川さんがあっちの肩持ったんでしょ? 怪しすぎるでしょ。あの人、自分の性格腐ってるのが悪いくせに先輩を逆恨みしてるんですよ。ここまで腐ってたらもう戻らないでしょうね」
「わあ、口悪い……」
「正直なことを言っただけです。明日の飲み会もなんで出席って言ったんですか。そんな奴のために行かなくていいですよ。一緒に欠席しましょ」
「だから、仕事とプライベートを一緒にするのはよくないから。それに、書類を抜き取った犯人だっていう証拠は何もないよ。決めつけるのはよくないし……」
「もう……そしてクズ元カレですよ! 本当に諦めたんですか? 俺、かわりに話します。今付き合ってるのは俺だって言ってきます!」
「そ、そんなことまでしなくていいって! 昨日直接話してびしっと言ったからもう大丈夫だよ」
慌ててそう言うと、彼は不満げに口を尖らせた。
「もっと俺にいろいろさせてくださいよ……せっかく彼氏になれたのに……」
「ごめんね、気持ちはありがたいの。でもあんまり波風立てたくないっていうか……」
「まあ、先輩はそういうタイプなのは知ってますけど。でも油断はダメです。元カレから連絡来たらすぐに知らせてください。次一通でもライン来たら俺が相手します。帰りも一人はだめ、俺が送ります。どうしても時間合わない時は敦美さんと一緒に帰るとかにしてください」
「そんなに?」
「そんなにです」
ずいっと顔を寄せられてとてもまっすぐな目で見られたので、つい頷いてしまった。彼が心配して言ってくれているのは十分分かるのだ。
「いや十分綺麗です!」
「適当に座ってね」
霧島くんはきょろきょろした後、ソファの端にちょんと座った。なんだかその光景がおかしくて、私はテーブルの上を片付けながら笑う。
「なんか小さくなってない?」
「いや、だって先輩の家って……」
「寛いでていいよ。ご飯何食べたいかな? えーと今あるのは鶏肉と豚肉かな……カレーとか唐揚げとかでいいなら」
「うわ! 最高のメニュー! えーとじゃあ、えーどうしよっかな、あーうん、カレーで!」
「はーい」
すぐにキッチンに立って準備を始めると、霧島くんが背後でうろうろしてこちらを覗き込んでくることにすぐ気が付いた。苦笑いして振り返る。
「テレビとかつけてていいよ」
「いやそんな……なんか手伝ってもいいですか? 俺そんな器用じゃないけど、玉ねぎの皮剝くくらいなら……あ、米洗います? さすがにそれは出来ます」
「え、いいの? ありがとう」
先日のように、彼は簡単なことだけど私を手伝ってくれた。自己申告したようにあまり料理は出来ないようだが、小さなことでもやってくれれば助かるし、何より一緒に料理をしてくれるその気持ちが嬉しかった。
二人で並んで簡単なカレーを作り、出来上がったそれを運んで食べる。特にこだわりなんてない、ルーを溶かして作るタイプのカレーなので比較的早く完成した。
「美味しいです!!」
「あはは、よかった。ルー溶かすだけのやつでごめん」
「いや俺作ったことあるけど断然こっちの方が美味いですよ。やっぱ違うなあ……あ、材料費ちゃんと教えてくださいね、金払うんで」
「いやこれぐらい」
「ちゃんとしましょ、こういうの」
スプーンを口に運びながら真剣な顔で言ってくれたので、素直にうなずいておいた。こういうところはきっちりしているの、霧島くんっぽかもしれない。
「で……増田さんと璃子先輩ってどういう知り合いだったんですか? あれ、普通の知り合いじゃないっしょ。何か嫌な感じしますもん」
直球でそんな質問が来たので、その鋭さに呆気にとられた。薫さんとは知り合いだった、とは伝えておいたが、そのほかは何も言っていないのに。
「実は……」
私は食べながら、薫さんが以前話した大輔の女友達であること、大輔はなぜか私と別れていないなんて思っていること、会議の時間についての出来事など全て話した。
すぐにお皿を空にした霧島くんは真面目な顔で話を聞いてくれ、私は何とか全部を説明し終える。
「という感じで……でもあの、会議の時間は私のうっかりかもしれないから……」
「ちょっと……なんでもっと早く言ってくれないんですか……」
霧島くんは深いため息をついて項垂れてしまった。私は慌てて言い訳を口にする。
「いや、会議のことは気のせいかなって思ってたの。でも資料がないことでさすがに誰かがわざとやったのかな、ってようやく思い出して……薫さんとはいろいろあったけど、仕事とプライベートは分けなきゃって思ってて」
「元カレのことは」
「……びしっと強く言ったから、さすがにもう諦めたかと思うし……」
「先輩。先輩はしっかり者だしほんといい人なのが魅力ですけど、もうちょっと人を疑った方がいいです。会議時間の時も、中津川さんがあっちの肩持ったんでしょ? 怪しすぎるでしょ。あの人、自分の性格腐ってるのが悪いくせに先輩を逆恨みしてるんですよ。ここまで腐ってたらもう戻らないでしょうね」
「わあ、口悪い……」
「正直なことを言っただけです。明日の飲み会もなんで出席って言ったんですか。そんな奴のために行かなくていいですよ。一緒に欠席しましょ」
「だから、仕事とプライベートを一緒にするのはよくないから。それに、書類を抜き取った犯人だっていう証拠は何もないよ。決めつけるのはよくないし……」
「もう……そしてクズ元カレですよ! 本当に諦めたんですか? 俺、かわりに話します。今付き合ってるのは俺だって言ってきます!」
「そ、そんなことまでしなくていいって! 昨日直接話してびしっと言ったからもう大丈夫だよ」
慌ててそう言うと、彼は不満げに口を尖らせた。
「もっと俺にいろいろさせてくださいよ……せっかく彼氏になれたのに……」
「ごめんね、気持ちはありがたいの。でもあんまり波風立てたくないっていうか……」
「まあ、先輩はそういうタイプなのは知ってますけど。でも油断はダメです。元カレから連絡来たらすぐに知らせてください。次一通でもライン来たら俺が相手します。帰りも一人はだめ、俺が送ります。どうしても時間合わない時は敦美さんと一緒に帰るとかにしてください」
「そんなに?」
「そんなにです」
ずいっと顔を寄せられてとてもまっすぐな目で見られたので、つい頷いてしまった。彼が心配して言ってくれているのは十分分かるのだ。