クズ男の本気愛
「他は正直、間違ってはないかもしれないです。なんかやたらモテるのは否定しないですね」
「わー言ってみたーい」
「長続きもしたことないかなあ。最長二か月」
「わー……言葉もなーい……」
「なんかイマイチ、異性として好きっていう感情がよくわからないんですよね。もちろんそれなりに異性に興味はあるしいつかは結婚したいって気持ちもある。告白されたときは、ちゃんと『この子を好きになるかも』って思って付き合うんですけど、一緒にいてもなんも気持ちが動かなくて。結局、ごめんなさいってしちゃいます」
「素晴らしい天然無自覚クズ」
「え!? 俺、クズですか?」
ぎょっとしたようにこちらを見てきたので、私は躊躇いなく頷いた。
「高校生ならともかく、もう二十六にもなって何度同じこと繰り返してるのよ。相手を傷つけるだけってもうわかり切ってるでしょう? なら安易に告白を受けるんじゃなくて、自分が好きになった人に自分から告白して恋愛を始めればいいでしょう」
「でも、自分から好きになったこと、ないんですよ」
困ったように彼が言った。なるほど、昔から周りにちやほやされてきた彼にとって、好意は向けられるものであって向けるものではないのか。誰かを好きになる前に、好きになられている。その好意に応えてくるだけの人生だった、ってことか。
……私みたいな普通の女からすれば、信じられない人生だ。
ちらりと隣を見てみると、こちらを見ている霧島くんと目が合った。文句のつけようがない顔立ち、高身長、仕事は出来るし恋愛以外の性格も、普通にいい子。そりゃ周りは放っておけない。
「あーまあ……次から次に彼女を作ってたんじゃ、誰かを好きになる暇ないんじゃない? 一度立ち止まって落ちついてみたら」
「なるほど。今、たまたま彼女いないんですよ。最近言い寄ってきてくれた子はみんな俺の好みじゃなくて。やっぱり好みとかって重要じゃないですか、顔とか雰囲気とか」
発言がやっぱり最低だな。普段いい子なのに、恋愛に関するとびっくりするぐらい気遣いできないのはなぜなんだ。
「一旦落ち着くのもありなんですかね。彼女いない時期とかほとんどなかったんだよなあ」
「……霧島くんと会話してると頭おかしくなりそう」
「しまった、また先輩に引かれちゃうかな」
「元々引いてたけどね」
「ひどい」
そう言って口を尖らせた霧島くんだが、すぐに何かを思い出したように私の顔を覗き込んだ。