ぜんぶ、ちょうだい。



あのとき、こうしておけばよかったな、とか。もっと、できることあったよね、とか。

もう、どうにもできないことはある。過去は、戻らない。

でも。

これから、できることだって、まだある。

私は、まだ泉先輩に、気持ちを伝えきれていない。

先輩に、「吉川の気持ちはこんなものか」なんて、そんなふうに思われたまま終わるのは――

いやだ。



「……最後に、もう少しくらい、頑張ってみようかな」



ヘラっと笑って、チョコバナナと看板を交換する。

ひまちゃんは、一瞬きょとんとしてから、溜まっていた涙をぐいっと乱暴に拭いた。



「行っておいで!!」



周りに丸聞こえな、恥ずかしいくらいの声量で、私の背中を思いきり押してくれる。


……ありがとう。


向かう先は、さっきまでいたクラスのテント。
焼き鳥屋。

チョコバナナを二本抱えて、全力で走る。
たぶん今の私、周りから見たら相当滑稽だと思う。
文化祭で、エプロン姿で、チョコバナナ二本持って走ってる女子。

……でも。

そんなこと、どうでもいい。

早く、伝えたかった。


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