ぜんぶ、ちょうだい。



「……かおってさ、困ってる子とか、放っとけないタイプでさ。私、転んだときに助けてもらったことがあって、そのときの、お姫様抱っこが……もう、永遠に忘れられないの~!」

「えぇ~!ずるいですっ!私も!私もされたいっ!」



完全に、何の争いなのか分からない。

でも、泉先輩が優しいことも、かっこいいことも、みんな本気で好きだったことも、この場にいる全員が、同じだった。



「……なにしてんだよ」



ふと、あきれたような低い声が耳に落ちてきた。
反射的に横を見ると、そこには腕を組んで、壁に体重を預ける泉先輩の姿があった。

え。

一瞬、時間が止まったみたいに、息の仕方を忘れる。



「かっ、かお……」



誰かが引きつった声を出す。
その声で、空気が一気に張りつめた。



「えっと、これは……」



先輩たちが、急にしどろもどろになって、視線をさまよわせる。
張本人が現れるって、たぶんこういうことを言うんだと思った。


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