ぜんぶ、ちょうだい。



「それで?って……やっぱり、かっこいいな~って」



そう言って、ちらっと、隣にいる泉先輩を見上げた。

すると。

泉先輩が、ふっと真顔になって、私の目をまっすぐに見てきた。
次の瞬間、私に身長を合わせるみたいに、すっとかがむ。



「それだけ?」



……っ。

ち、近い。

近すぎる。

息がかかりそうな距離で、視線が絡んで、逃げ場がない。

ドクドク、ドクドク。

心臓の音が、死にそうなくらい早くて、うるさくて、たぶん、先輩にも聞こえてるんじゃないかって思うくらい。

……先輩には、たぶん、全部ばれてる気がする。



「……わ、私も、されたいなって……」



声が、情けないくらい小さくなる。



「羨ましいなって……先輩は、今……私の、なのに……」



彼女になれたからって。
それだけで、先輩が私のことを好きだって、思っていいわけじゃない。

きっと、先輩は優しいだけで、私に付き合って「くれてる」だけで。

昨日の、
――幸せにしてもらいたい、
だって。

あれも、きっと、その場しのぎで言っただけ。


< 198 / 211 >

この作品をシェア

pagetop