ぜんぶ、ちょうだい。



きょろきょろと、まるで不審者みたいに、食堂をじろじろと見回す。
きっとひまちゃんからしたら、相当変な人に映っているだろうな、と思う。

その視線の先、一番奥の6人テーブル。
そこに、泉先輩が友達と笑いながらごはんを食べているのを見つけた。



「あ……いた……」



見つけた瞬間に、どうしても顔がにやけそうになって、必死で押さえ込む。



「ひまちゃん。もぐもぐしてる先輩が、たまらなくかわいいよ……」



小声で呟くと、ひまちゃんが呆れたように私を見上げる。



「こまちゃん、この距離で見えるの、怖いよ……」

「あの中で、どうやって話しかけるかなんですが……」

「なんで?普通に声かければいいじゃん」

「んー。友達といるときに邪魔したくないし……」



口ごもると、ひまちゃんは大きくため息をついた。



「こまちゃん、それじゃあ今までと変わらないっていうかー。むしろ、退化っていうかー」

「退化!?」

「勿体ないよ。せっかく彼女ポジションなのに。そんなんじゃ、好きになってもらうどころか、速攻振られちゃうよ」



ひまちゃんは、無邪気に爆弾を落として、私を置いて食券のほうへすたすた歩いて行ってしまった。


< 207 / 228 >

この作品をシェア

pagetop