溺れるほどの愛は深くて重く、そして甘い
独占欲と公私混同
「16時から入っているミーティングの後は、今日の分の書類にサインをお願いします。この束が該当の書類です」
「分かった。…ああ、そうだ。この前の案件について、どうなったか知っているか?」
「今は担当者が最後の詰めをしてくれていますが、いい返事をもらえた様子でした」
「そうか。ありがとう」
あんなことを言われはしたが、私たちは真面目に仕事をこなしていた。
そもそも、お互いに公私混同したくないタイプなので、仕事に支障は出ないことに安心した。
そんなことを思いながら手元の書類を確認していると、何やら違和感が生じる。
(あれ、この書類…)
「どうした?」
書類の確認をしていると、視界の端で智弘が首を傾げた。
「この書類、多分間違えて回ってきたようです。渡してきますので、一時的に席を外させていただきます」
私の言葉に、智弘は顔を顰める。
「……」
「書類を渡してくるだけなので、すぐに戻ってきますよ。ミーティング準備には必ず間に合いますので、ご安心ください」
「寄り道するなよ」
「承知いたしました」
「……なら」
いつもなら突っかかることなく見送ってくれるはずが、じっと見つめられた。その違和感を感じつつも、私が渡しに行く他ない。改めて一声かけてから、部屋を後にした。