溺れるほどの愛は深くて重く、そして甘い
「…嫉妬した」
首筋に頭を埋めながら、低く言われる。若干気まずそうな声色に、その顔を見たくなってしまう。
「ねぇ、」
「見るな」
まだ何も言っていないのに、言いたいことを察されてしまった。付き合いが長いのも考えものだ。
「…すぐに帰ってくるって言ったから待っていたのに、全然帰ってこないし。様子を見に行ったら、楽しそうに喋っていたのを見た俺の気持ちを考えてくれ」
「それは…本当にごめんなさい」
素直に謝ると、パッと顔を離された。それから、
「あと、あの向井という男。アイツだけは本当に許せない」
長いため息と共に吐き出された言葉。惜しげもなく敵意をむき出しにした圧に、思わず震えあがってしまう。
「そ、そんなに、?」
「ああ。あれは完全に牽制だった。美咲は俺のものだというのに、なんて図々しい」
苦々しく呟かれる言葉。その中に滲む独占欲を間近で感じ、ぞくっとする。
まるで夜の熱のような、、
私からの視線に気付いたのか、智弘は表情を一変させて怪しく笑う。
「それは……あとでな」
「なにが…あ!違う!!違うから!!!!」
顔に熱が集まるのを感じ、慌てて訂正するも逆効果。
「そんなに蕩けた目をしておいて、『違う』は嘘だろ」
いたずらな言葉と共に、豪快に笑われてしまうだけだった。
その顔に、先ほどまでの陰りは見られなかった。