溺れるほどの愛は深くて重く、そして甘い
「おー!久しぶり〜!」
久々の同窓会当日。
数年ぶりに顔を合わせる友人に、智弘も私も心なしか顔を綻ばせていた。
お店は、団体でも受け入れをしてくれる個室居酒屋。値段も高すぎないようで、お財布にも良心的だ。
智弘も、御曹司といえど金銭感覚はまともな方。それは身近で見ている私が感じていることだった。まあ、私の感覚がすでに狂っていたら測りようがないけれども。
「美咲〜!」
名前を呼ばれた方を見ると、親友の凛が元気よく手を振っていた。彼女に手を振り返していると、智弘が小さく笑う。
「行ってきたらどうだ?」
「…いいの?」
「ああ。友人関係は大切にしてくれ。俺も、今日は楽しんでくるからさ」
同じ会場内といえど、自然と男女で分かれてしまう。それを見越しての言葉だろう、と察して頷く。
「ありがとう」
「また帰りな」
凛の元に駆け寄ると、賑やかな声が大きくなる。他にも女性陣が集まっており、早速昔話に花を咲かせていた。
「凛、久しぶり」
「久しぶり〜!!元気にしてた!?」
「うん。ぼちぼちやってるよ。凛はどう?元気?」
「見ての通り、元気だよ!最近は、趣味でボルダリングを始めたんだー!」
「すごっ!元気だね〜」
そんな会話をしつつ、お店の中に入る。
なんとなくで決まった席に座り、注文を通し終える。お店側も準備をしていたのか、飲み物はすぐに運ばれてきた。
「それじゃあ、乾杯といきましょうか!」
幹事の音頭で、皆がグラスを持ち上げる。そして、
「「「「かんぱーい!!!」」」」
グラス同士がぶつかり、軽快な音を立てた。
(こんなに元気のいい乾杯なんて、いつぶりに聞いただろう)
そんなことを思いながら、久々のビールに口をつけたのだった。