溺れるほどの愛は深くて重く、そして甘い
「そんなに警戒しなくていいよ。根掘り葉掘り聞く気はない」
「…いいのか?」
「人様の色恋に首突っ込むほど野暮ではないからさ」
肩を竦めれば、安心したような顔をされた。席を移動してきた時から警戒心マックスだったが、ようやく安心してくれたらしい。
「でもね、なんとなく分かるよ。女の勘ってやつかな」
「……」
「こんなにも自己肯定の低い美咲が、御曹司の恋人なんてね。で且つ、秘書までやってるっていうんだから驚いちゃった。親友の私にすら、報告の1つもなかったんだよ」
酒が入っているため、度が過ぎないように気を付けながら、できるだけ明るく話す。
「私は、あんたたちに幸せになってほしいと本気で思ってる。だからヒントをあげるね」
美咲を智弘に預ければ、彼は美咲に膝枕をして、その頭を撫でていた。その目は、慈愛に満ちている。
なんだ。ちゃんと大事に思ってるじゃん。
「美咲のことを愛したいなら、同じぐらい美咲に愛されなさい。数多の選択肢を得た美咲が、その上でアンタを選ぶ。そこまで愛されたなら、満点合格よ」
彼が手をつけていない枝豆を、器ごと手元に引き寄せた。そして、食べながら話を進める。
「美咲はね、色々考えてから最後に言葉にする子なの。だからこの子の言葉は、他の誰よりも重たいんだよ。そして、『愛してる』という言葉の重さを、きっと誰よりも理解してる」
「……」
「美咲から発せられる言葉に、軽薄なものなんて1つもない。全てが深く考え抜かれた上での言葉なの。あんたが重い愛を渡すなら、美咲の重い言葉だって受け止めてあげて」
___曲がり間違っても、捨てて否定した挙句に逃げるなんてことはしないで。
そんな思いで見つめると、強く頷かれた。