溺れるほどの愛は深くて重く、そして甘い
本気で覚悟したような表情に、満足した。私が口を挟むのはここまでにしておこう。あとは本人たちに任せるべきだ。
ちょっと言い過ぎた気もするが、酔っ払いの戯言ということにしてもらおう。
「んじゃ、私はあっちのグループに突撃してくるよ。美咲が起きたら、適当に言っておいて」
「ああ。…ありがとうな」
「んーん。お節介だったらごめんね」
「……これからも、美咲の親友で居てやってくれ」
「あははっ、もちろん!美咲の親友枠は、たとえ智弘相手でも譲る気ないからね」
そう言ってやれば、朗らかに笑われた。なんだ、繕わなくても笑えるじゃん。
今日の同窓会の間、智弘はずっと愛想笑いを浮かべていた。誰に話しかけられても、どんな話題でも同じ表情。失礼ながら薄気味悪さを感じていたが、今の笑顔を見ることができて満足だ。美咲にもその笑顔を見せてやってよ。
(…人の心なんて、本人以外には分からないもの。下手したら、本人にだって分からない。だから、信じる。その信頼を『愛情』と呼んでもいいと、私は思うなぁ)
お酒も影響か、なんだかポエミーなことが沢山浮かぶ。
でも、それもまた本質だろう。人間なんてそんなものだ。
「結婚式、呼んでよね」
私の呟きは、居酒屋の賑わいにひっそりと溶けていった。