溺れるほどの愛は深くて重く、そして甘い
≪ 視点 美咲 ≫



「…った、」

 目が覚めると途端に襲う頭痛。頭を抱えたいけれど、その頭が痛いんだから仕方ない。

「起きたか」

 寝室の扉を開ける音。目を開けられないが、声で智弘だと察する。

「…頭痛い」
「あんなに飲んだんだ。痛くて当然だろう」

 そんな言葉と共に、スポーツドリンクを渡される。なんとか受け取り、上体を起こして飲んだ。冷たさが心地よいが、それだけで精一杯だ。半分ほど一気に飲み、息を吐いた。

「…同窓会は…?」
「美咲が寝てから30分後ぐらいに、お開きになったんだ。で、そのままタクシーで連れて帰ってきて、風呂入れて寝かせた」
「まっっっじでごめん。起きようとは思ったんだけど、結構飲んでたみたいで…」
「それだけ楽しめたんだろ?ならいいさ」

 優しく言われるも、申し訳なさは拭えない。

「…本当にごめんね。迷惑かけちゃった」
「そんなの気にしなくて、」

 そこまで言いかけて、智弘の動きが固まった。ほんの少し考えるように黙った後、彼は納得したように頷いた。

「いや、折角だからお礼をしてもらおうかな」
「え」
「なんだ、嫌か?」
「い、嫌じゃないよ!?ただ、珍しいなって思っただけ」

 慌てて訂正するが、本当に珍しいのだ。私にできることなんて、彼の相手ぐらいしか、、

「あ、あのさ…その、お礼が智弘の相手っていう話なら、別日でお願いできないかな?気持ちは山々なんだけど、如何せん二日酔いで吐く自信しかなくて…」

 ごにょごにょと言い訳を並べていると、智弘は静かに頭を撫でてきた。

 その表情は曇っていて、どこか寂しげだ。
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