溺れるほどの愛は深くて重く、そして甘い
視界いっぱいに広がる大きな水槽。
予想通り、館内にいる客はまばらだった。平日に来て正解だ。これなら落ち着いて観賞できそう。
色とりどりの魚たちが、まるで舞うかのように広い水槽内を泳いでいた。時折浮かぶ泡さえも、一過性の儚さを醸し出している。
それら全てが持ち得る美しさを惜しげもなく見せてくるものだから、思わず見入ってしまう。
(きれい…)
しばらく静かに見上げていたが、この時間も永遠ではない。ふと、智弘のことが気になった。
「智弘?」
なぜか数歩後ろにいる彼を振り返る。彼は、どこか遠くを見るような目で私のことを見つめていた。
水槽を、ではない。私のことを、である。
「…どうしたの?」
その視線が怖くて、恐る恐る尋ねる。彼は何でもないように首を横に振り、微かに笑いながら隣まで歩いてきた。
「いや、水族館なんて久々だなと思ったんだ」
懐かしむような言葉。智弘は水槽を見上げながら、眩しそうに目を細めた。
「え、水族館に来たことあるの!?」
「小学生の時に、遠足で1回だけな」
肩をすくめながら智弘は話した。なるほど。遠足で来たなら納得だ。
智弘は御曹司と言えど、大学まで一貫して公立の学校に通っていた。だからこそ、遠足では大多数の学校と大差ない場所に行ったのだろう。かく言う私も、小学生の時に動物園や水族館を訪れた覚えがある。
智弘にとっては、普段行けない場所に行くことのできた貴重な思い出に違いない。
「大人になっても感動は変わらないものだな。水族館の大きな水槽には、小学生の時も驚かされた覚えがある」
「…智弘も綺麗だと思う?」
「ああ。本当に綺麗だ」
遠くを見るような目をしていると思ったが、本当に遠い過去のことを思い出していたのか。それなら、私のことを見つめていたように感じたのも、きっと気のせいだ。水族館の独特な雰囲気に乗せられ、変に勘ぐってしまっただけ。
予想通り、館内にいる客はまばらだった。平日に来て正解だ。これなら落ち着いて観賞できそう。
色とりどりの魚たちが、まるで舞うかのように広い水槽内を泳いでいた。時折浮かぶ泡さえも、一過性の儚さを醸し出している。
それら全てが持ち得る美しさを惜しげもなく見せてくるものだから、思わず見入ってしまう。
(きれい…)
しばらく静かに見上げていたが、この時間も永遠ではない。ふと、智弘のことが気になった。
「智弘?」
なぜか数歩後ろにいる彼を振り返る。彼は、どこか遠くを見るような目で私のことを見つめていた。
水槽を、ではない。私のことを、である。
「…どうしたの?」
その視線が怖くて、恐る恐る尋ねる。彼は何でもないように首を横に振り、微かに笑いながら隣まで歩いてきた。
「いや、水族館なんて久々だなと思ったんだ」
懐かしむような言葉。智弘は水槽を見上げながら、眩しそうに目を細めた。
「え、水族館に来たことあるの!?」
「小学生の時に、遠足で1回だけな」
肩をすくめながら智弘は話した。なるほど。遠足で来たなら納得だ。
智弘は御曹司と言えど、大学まで一貫して公立の学校に通っていた。だからこそ、遠足では大多数の学校と大差ない場所に行ったのだろう。かく言う私も、小学生の時に動物園や水族館を訪れた覚えがある。
智弘にとっては、普段行けない場所に行くことのできた貴重な思い出に違いない。
「大人になっても感動は変わらないものだな。水族館の大きな水槽には、小学生の時も驚かされた覚えがある」
「…智弘も綺麗だと思う?」
「ああ。本当に綺麗だ」
遠くを見るような目をしていると思ったが、本当に遠い過去のことを思い出していたのか。それなら、私のことを見つめていたように感じたのも、きっと気のせいだ。水族館の独特な雰囲気に乗せられ、変に勘ぐってしまっただけ。