溺れるほどの愛は深くて重く、そして甘い
彼の会社に勤めるに辺り、何も周知されていない状態で筆記や面接を受けた。ここは、あくまでも平等に。
その上で内定を勝ち取ったため、予想通りコネ入社と言われることは全くなかった。
それにしても、本当に多くの人が面接会場にいた。
性別や年齢も様々で、中には驚くような実績を持っている人もいた。
それほど人気のある会社だと思う反面、智弘の家の凄さを本当の意味で理解していなかったのだと、痛感した。
大企業の御曹司と、平凡な自分。
(いつか、智弘も目が覚めるんだろうな)
そんなことを思い始めたのは、きっとこの時だったからだと思う。
大企業の社長は、女優や同じぐらいのご令嬢と結婚することが多いと聞いたことがある。ニュースでも、何度か見た。
それを思うと、彼と私が結婚する未来にモヤがかかって仕方ない。
出会いは高校時代。あの時と気持ちが変わっても、何の罪でもないだろう。
(その時が来たら、___)
胸を燻ぶる感情に、今は見ないふりをすることにした。