溺れるほどの愛は深くて重く、そして甘い
執務室でプロジェクトの資料の作成していると、内線が鳴った。
「はい、前田です」
「あ、前田さん。あの……急なことで本当に申し訳ないのですが、1時間だけでもいいので手を貸してもらえないですか?」
声の主は、以前お世話になった部署の先輩だった。声からも疲弊しきっているのが伝わってくる。智弘が不在の時に秘書である私を呼び出すのは、よほど逼迫した状況なのだろう。
「一体どうされたのですか?」
「風邪がオフィス内で広がって、ただでさえ繁忙期なのに欠員が出ているんです。皆頑張っているけれど、どう考えても終わらないので、ほんの少しだけでも手伝っていただきたくて…お願いします」
営業の人が風邪をひいて、それを社内に持ち込んでしまったのだろうか。もしくは、電車通勤の人が車内で風邪を拾ったか。感染経路は分からないが、こんなにも忙しい中の欠員は地獄だろう。
「承知いたしました。今からオフィスに向かいます」
私は迷うことなく承諾した。秘書になったとはいえ、かつて下積み時代に世話になった部署だ。それに、しっかり働いている故に困っている人を見過すほど、私は落ちぶれていない。
部署のフロアに降りると、そこは戦場さながらだった。皆、緊張感のある顔でキーボードを叩き、電話を握りしめている。こんなにも酷い現状、今後は改善しなければならないと思う。今年の繁忙期を超えたら、解決策を智弘に提案してみよう。
「はい、前田です」
「あ、前田さん。あの……急なことで本当に申し訳ないのですが、1時間だけでもいいので手を貸してもらえないですか?」
声の主は、以前お世話になった部署の先輩だった。声からも疲弊しきっているのが伝わってくる。智弘が不在の時に秘書である私を呼び出すのは、よほど逼迫した状況なのだろう。
「一体どうされたのですか?」
「風邪がオフィス内で広がって、ただでさえ繁忙期なのに欠員が出ているんです。皆頑張っているけれど、どう考えても終わらないので、ほんの少しだけでも手伝っていただきたくて…お願いします」
営業の人が風邪をひいて、それを社内に持ち込んでしまったのだろうか。もしくは、電車通勤の人が車内で風邪を拾ったか。感染経路は分からないが、こんなにも忙しい中の欠員は地獄だろう。
「承知いたしました。今からオフィスに向かいます」
私は迷うことなく承諾した。秘書になったとはいえ、かつて下積み時代に世話になった部署だ。それに、しっかり働いている故に困っている人を見過すほど、私は落ちぶれていない。
部署のフロアに降りると、そこは戦場さながらだった。皆、緊張感のある顔でキーボードを叩き、電話を握りしめている。こんなにも酷い現状、今後は改善しなければならないと思う。今年の繁忙期を超えたら、解決策を智弘に提案してみよう。