溺れるほどの愛は深くて重く、そして甘い
 どれぐらいそうしていただろう。
 どちらともなく笑い、器用にも手を繋いだままリビングまで歩いた。

 この家にある見慣れた全てに安心してしまう。思えば今日まで気を張り続けていた。自覚すると共にスイッチが切れたのか、一瞬ふらついてしまった。

「美咲?」

 私の様子に気が付いた智弘が不安そうな顔をする。もうそんな顔をして欲しくないのに。

「ううん、大丈夫。…ちょっと安心しちゃったみたい」
「…どうして無理に笑うんだ」

 そんな声と共に抱き上げられる。いわゆるお姫様抱っこ。驚いた反射で彼の首に腕を回すと、クスクスと笑われた。

「今日は疲れただろう。強がらず、存分に甘えてくれればいいさ」
 
 ソファーに優しく下ろされるも、彼は座らない。

「風呂を沸してくる。少しの間、休んでいてくれ」
「え、」
「そんなに寂しそうな顔をするな。すぐに戻ってくるから」

 頭をひと撫ですると、彼はリビングを出て行ってしまった。
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