溺れるほどの愛は深くて重く、そして甘い
「…それは、俺以外の誰かにそう言われたのか?」
予想外の方向から質問に、一瞬理解が遅れた。でもすぐに意味を理解して、「違う」と言う。その答えに満足したのか、智弘は肩の力を抜いた。
「じゃあいい。俺が許可を出してのことだ。それの何が問題なんだ?」
「で、でも、浮気紛いじゃ…」
「世間の意見は知らないが、俺としては浮気だと思わないな。美咲が、今後俺と平和に幸せになるために自分なりに考えてくれた結果の行動なんだろう?それを浮気だなんて言わない」
ここでも智弘は世間の意見よりも、私という個人の考えを尊重してくれた。
いつだってそうだ。彼は、誰の目も気にせずに私のことを選んでくれる。
囚われ続けているのは、ずっと私だ。
「…ま、それはそれとして、腹が立っているには違いないけどな」
「へ…?」
「覚悟はしていたが、やはり目の当たりにすると腹が立つな。後をつけている時、何度アンガーマネジメントに取り組んだことか」
「そういえば、ずっと後つけてたよね」
その言葉で思い出し、そっと指摘すると彼は大きく頷いた。それも、清々しいほどの笑みを浮かべて。
「ああ、美咲が触れられた時にすぐに守れるように備えてな」
「本音は?」
「GPSに張り付いて家で地団駄踏むぐらいなら、尾行した方が効率的だと思った」
ちなみにどちらも本音だ、と付け加えられる。
素直な言葉に小さな笑いが漏れる。そこまで私のことを考えてくれているということが、嬉しくて仕方ない。
「行動力の塊ね」
「誉め言葉として受け取っておくよ」
そんな会話をしていると、お風呂が沸いた音が鳴った。いつの間にそんな時間が経ったのか。
「さて、先に入っておいで。ゆっくりしたいだろう?」
私の気持ちを落ち着けるために笑える話をしてくれたのだろう。相変わらず慈愛の目をした智弘は、先にお風呂を勧めてくれた。